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第21話 診察前の再会、睨み据える端正な歪み

last update Last Updated: 2025-12-04 09:30:40

「イルゼ、おはよう! 今日も早いわね!」

「おはよう……?」

 メラニーが声量も変えずに軽い口調で話しかけてきた。

 イルゼはそれに驚き、目をしばたたく。いったいなぜ……大丈夫なのだろうか?

 不安げに、ミヒャエルの部屋に続く天鵞絨のベールへ目を向けると、メラニーは噴き出すようにケラケラと笑い出した。

「私、気分があがっちゃうと、どうも声が大きくなるみたいでね。敬語使わないで喋ってるの旦那様にバレちゃったの。そしたら別に良いんじゃないのって」

「……そうなの?」

 確かに昨日の鶏の話をした時の反応や声量を思い返すと、バレそうな気がしていた。否、彼女の性格を考えればボロが出そうな気がして仕方ない。

 だが、馬鹿丁寧な口調で話されるより気が楽だ。

 何せ〝様〟などと呼ばれると背中がむず痒くて堪らない。それに、たった三日だが、イルゼは彼女に慣れ始め、丁寧な言葉使いをやめた。

 否、彼女に「そっちこそ敬語はやめろ」と言われたのだ。

 イルゼは昨日を思い出し、彼女を一瞥いちべつして小さく息を吐く。

 けれど、メラニーときたら、おてんばな笑みを浮かべていた。

「あら。今日のディアンドルも可愛いじゃない。よく似合ってるわ。いいなぁーディアンドル。可愛いからちょっと羨ましい」

 そう言って、メラニーはお仕着せの裾を摘まんで眉を寄せた。

 畜産業と同じく、貴族に仕える使用人だって年中無休とおぼしい。イルゼはすぐそれを理解して「今度、着てみる?」とけば彼女は即刻、首を振った。

「いいなぁーとは思うけどね、そういうのじゃないの。そんなことしたら、今度こそ怒られるわ。さぁさ、午前中に診察でしょ? 午前って言っても私もいつに来るか分からないから早めに食事にしちゃって」

 そうして、メラニーはテーブルの上に朝食を並べ終えると退室した。

 ***

 ミヒャエルが医者と義兄のヨハンを連れてきたのはイルゼが食事を終えて、三時間ほど──時計の針が午
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